2002年7月のプチ日記

7月31日(水曜) 深夜

 祖父のお通夜に出てきました。実家から更新。

 葬儀会場のトイレに行ったら、高校生の従兄弟が髪を黒く染めている真っ最中だった。「茶髪で葬式に臨むのはダメよ」と親に注意されたので、急いで染め直しているらしい。

 喪に服すためには「黒」であることが重視される。ぼくもベージュ色の腕時計をしているが、これなどもほんとは反則なのだろう。黒くできるところは全て黒くすることが大切なんである。

 こう考えると、黒くすべきパーツは他にもたくさんある。

 近しい人の訃報を知ったとき、まず足を運ぶべきは海水浴場か日焼けサロンなのかもしれません。全身をまっ黒にすることによって悲嘆の意を表現するわけである。

 もちろん乳首や陰茎が黒いことも重要。心から喪に服すためには、普段からよく「遊んで」おかないといけないですね。

 自分の首をしめる結果になってしまいションボリです。

 

7月30日(火曜) 夜

 祖父が死んだ。さみしいね。

 明日お通夜が行われるのであわてて喪服を買いに行った。スーツの上下にワイシャツ、ネクタイ、ベルト、靴と一式そろえた。ぼくはモノトーンが嫌いで白シャツや黒靴を持ってないから、こういうときに高くつく。

 で、これで安心と思ってレジに並ぼうとしたら、店員から「あとはもうよろしいですか?」と声をかけられた。え? ぜんぶ揃えたのにまだ何を買えというのか。黒ブリーフとか白コンドームとかまで押し売する気か!? 喪に服す者の心理につけこむこの悪魔めが。

 …と警戒心を旺盛にしていたところ、店員いわく「靴下はよろしかったですか」。詳しく聞いてみれば、葬式には黒い靴下をはいていくのがしきたりらしい。わー知らなかった。

 店員に薦められなければ、手持ちのアーガイル柄の靴下でお通夜に臨んでいたところでした。

−−−

 二親等の親族が死ぬと、会社から3日間の特別休暇(忌引)が出る。

 というわけで明日から3日間の休み。その後は土日だか5連休である。降ってわいた大型連休。

 不謹慎かもしれないが嬉しい。平日の休暇だから通帳の更新もできるし散髪にもいける。ついでに郵便振込みも済ませておこう。

 祖父が命と引き替えにぼくに与えてくれたもの。…それは通帳更新と散髪、そして郵便振込み。 一生大切にするよ!

 でも、祖父の最大の置き土産は、「日本酒を毎日5合飲んでても90歳近くまで生きた」という事実だ。

 

7月29日(月曜) 夜

 近所で見かけた選挙の立て看板。

 「京都の未来、鈴木にたくす!」まではいいとして、その後にくっついてる「TAX」はなんだ。「たくす」にかけてるのは分かるが、意味的になにをどうかけてるのか皆目分かりません。

 それともなんですか。「鈴木にたくすTAX」→「鈴木にたくす税」→「鈴木にたくすぜい!」というダブルミーニング(というかダブルナンセンス)でやんすか。ああ、書いてて顔が赤くなってくるぜい!

 というか、そこまでして落選したいか。

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 全然関係ないが、ふと気づいたこと。

 階段を降りるとき、いつも「タッタ、タッタ、タッタ〜」とリズムをとりながら妙に軽快なステップを踏んでいる。ほかの人を観察してみると、やはり同じくリズミカルに降りている。こうするほうがなんだか楽チンなんだろう。

 階段降りるときは誰もがステップ。

 高倉健もショーン・コネリーも金大中も、階段降りるときは軽快にステップしているに違いありません。

 

7月28日(日曜) 夜

 あまりにも暑いので、外出するときはベランダを開けっ放しに。

 うちはアパートの5階なので大丈夫だろうというのもあるが、だいいち部屋には現金も通帳も置いていない。万一、ロープとか使って特殊部隊みたいに我が家に忍び込んだとしても、金目のモノなど限られている。

 一番値が張るものはパソコンだけど、デスクトップ型なので運搬がたいへんである。次いで高価なのは冷蔵庫。こんなモノを盗む空き巣がいたら尊敬するかもしれない。

 ちなみに盗まれて一番困るのは敷布団です(帰宅しても寝られないし)。

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 知人の友人がタトゥーを入れたそうだ。

 どんな柄なのかは知らないが(きっと新幹線とかレーシングカーとかなんだろう)、それはさておき、彫ってからもいろいろとケアが大変らしい。たとえば入浴するときも、強くこするのは厳禁で、手でやさしく洗わなくちゃいけないんだとか。

 タトゥーといえばヤクザやヘビメタの方々のそれを連想するが、彼らも体を洗うときは細心の注意をはらってマイルドタッチしているのだろう。想像するとちょっと可笑しい。

 ところで足元に靴下柄のタトゥーを入れておけば、一生「靴下いらず」で過ごせますね。毎日おなじ靴下だけど。

 

7月27日(土曜) 夜

 もう一通いただいたメールには「安藤奈津子」さん。あんドーナツ子さん。

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 知人に自称「追っかけフェチ」の女性がいる。

 彼女が言うには、「好きな異性を追いかけているとき」でないと恋愛感情が湧き起こらないらしい。だから逆に、それまで好意を抱いていた相手でも、向こうから近づいてこられると途端に愛情が冷めてしまうんだト。

 ウディ・アレン映画にあった「私を会員にするようなクラブには死んでも入りたくない」というフレーズを地でいくような人生であるが、このことを周囲(恋人を含む)に伝えているというからさらに驚く。これってどうなんだろう。

 たとえば周囲の誰かが彼女に好意を抱いたとする。だが、その気持ちを表にだした途端、彼女の守備範囲から外れてしまうのだ。

 かといって冷たく接してもダメである。冷たく接している時点で「彼女の気を引こうとしている」ことになってしまうので、これまた守備範囲から外れてしまうのである。

 この女性には長年連れ添っている彼氏がいるが、どういう風な関係なのか想像しにくくて楽しい。「つかず離れず」の名人芸か。

 なんだか、ものすごく普通のカップルのような気もしてきました。

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 さて本日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京毒」。童心に返ろうキャンペーンということで、オリジナルの毒作りに挑戦してみたレポートです。部屋にあるものだけで作ったので、おそろしく退屈な文章に仕上がっております。

 「まぜるな危険」の漂白剤をベースにいろいろ調合してたら、部屋に妙な気体が充満して喉をやられヒドい目にあいました。心底のバカです。バカを悟られるのはくやしいので、コラム本文では何事もなかったかのように進めてます。

 よろしければご覧ください。…と書くのも心苦しいですが、よろしければ。

 

7月26日(金曜) 夜

 昨夜の日記で「大場加奈子」さんについて書いたら読者のかたから連絡いただきました。

 「私の近所には佐藤俊夫さんがいます!」

 サトウトシオさん。シュガー&ソルト。字面的には「酸いも甘いも噛み分けたビッグガイ」だけど、なにしろ砂糖と塩である。そのまんま過ぎて気が抜けますな。

 そういや久住昌之さんの漫画に「中田留美」さんというのがいた。中だるみさん。入社面接なんかで自己紹介するとき、さぞつらかったろうと思う。

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 ウンチク話を披露するのが好きなM君という知人がいる。

 それは大いに結構なのだが、M君は記憶力が中途半端に悪いからたちが悪い。

 たとえば先日。

 ぼくが「焼酎をトマトジュースで割って飲んでる人がいるんだよ」と言ったところ、M君から「へー、そんな人がいるんだ!」と感心されたわけですが。

 翌週、彼と飲み会の席で一緒になったので喋っていたら突然きりだされた。

 「あのさあ、焼酎をトマトジュースで割ったらすげー美味しいって知ってた?」

 ひとの話をそのまま喋ってるどころか、少しだけ膨らませている。つつましやかなポイントアップ作戦のおかげで全てがぶちこわし。

 こういうポンチャックガイがいると心底ほっとする。オレも生きてていいんだと思えるひととき。

 

7月25日(水曜) 夜

 いまの勤務先は女性が多い部署なのでなにかと気を使う。

 今日も同僚の女性に気を使って「散髪してきたんですか。お似合いですねー」と声をかけたら、「散髪なんてしてませんけど」と言われてしまいました。慣れないことをするもんじゃないと痛感。

 あまり関係ないですが、この同僚の知人に「大場可奈子」という子がいたそうです。オオバカナコ。

 ちょっとかわいそう。大バカなのは可奈子さんの両親なんだけどね。

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 今日はインタビューの仕事をしてました。

 先方の話を記録しなくちゃならないのだが、諸事情あってテープ録音が禁止されていた。そのため「会話をひたすらメモに書き続ける」というハードな作業となったわけですが。

 指がつりそうになりながら話を筆記するぼくに同情した相手が何度もねぎらいの言葉をかけてくるんである。

 「いやータイヘンですねー。手も疲れるでしょう。すみませんねえ、いろいろ喋っちゃって」
 「ほんとご苦労さまです。なんか申し訳ない気分になってきますねー。大丈夫ですか? しんどかったら休んでくださいね。」
 「それにしても全部書きとめるなんてすごいですねー。私だったらようやりませんわ。タイヘンですねー」

 …頼むから余計なことを喋らないでくれ。こっちは「会話の内容は全て記録するように」と指示されているので、これらも全て書きとめなくちゃならないんである。疲労で震える手で「いやータイヘンですねー」なんて速記させられる身にもなってほしい。

 あと「そんな字で後から読解できるんですか?」とも言われたが、これも当然そのまま書きとめました。ミミズの這ったような字で。

 

7月23日(月曜) 夜

 肝ガンを患っている祖父(大の酒好き。いまどきの京都で紹介したことアリ)の容体がいよいよ悪化している。

 それで今日は急きょ見舞いに行ってきたのだが、病床の祖父は身体にチューブを何本もつながれ、腹水がたまって寝たきりになっていた。すでに末期状態で手術もできない状態らしい。

 老い先が短いことは本人も自覚しているようで、ぼくの姿を見ると「来てくれてありがとな」と言いながらも、「こんな姿になってしもうて…」「もうアカンかもしれん」と弱気な言葉の数々。そして別れ際、ぽつりと言われた。

 「うちの玄関にある角瓶のジャンボ、わしの代わりに飲んでくれんかなァ」

身体に変調をきたしてもまだ飲めると信じて安ウイスキーのジャンボ瓶を買った祖父。でも飲むことはもうないと悟り、人工呼吸器をとってまで孫に酒を託そうとする祖父。

 思わず涙があふれそうになった。なんていういじらしさだ。

 ぼくは祖父の痩せた手をにぎりながら答えた。「ぜったい飲むよ! じいちゃんみたいに一晩で飲むよ!」。

 そしたら「無茶飲みはアカン」とたしなめられました。

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 しかし、こうして衰弱していく祖父の姿を見るとつい感傷的になってしまう。ぼくはたいがい冷血人間だと思っていたが、本当はとってもハートウォーミングなポエムガイなのかもしれません。なぁんだ、そうだったんだ。

 ただ唯一の不満は喪服のスーツを作る費用である。ぜんぶ揃えると3万円くらいかかるからけっこう痛い。この暑い季節のこと、黒の半ズボンに半そでの白シャツではダメだろうかと半ば真剣に考えたり。

 祖父の葬式に黒の半ズボン姿で登場する28歳男性。

 …こんなヤツにハートウォーミングを語る資格などなし。いわんやポエムガイをや。

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 帰宅してメールをチェックしてみたら、久しぶりにたくさんのメールが届いていたので驚いた。やったー。

 …と喜んだのも束の間、その大半は昨日の日記についての指摘だった。「憮然としないってどういう意味ですか?」「これは明らかに誤用でしょう」などなど。

 すみません。これは「釈然としない」のミスでした。ぼくの文章などこんなものです。

 

7月22日(月曜) 夜

 同僚が映画館で「少林サッカー」を観てきたらしい。いいなァ、ぼくも観たい。

 で、素直に「うわーいいなァ」と羨ましがったらみんなから笑われた。だったらおまえも観にいけよと。

 たしかにその通りなんだけど、どうも憮然としない。ものすごく憮然としない。

 そういや以前、市内の100円ショップで知人が買ったコップを見たときも、「うわーいいなァ…」とため息をついて笑われたことがあった。このときも「だったらおまえも買ったらいいじゃん」と言われたのだが、ぼくは一人でムッとしていた。

 すぐに他人を羨ましがる性癖はなかなか直りません。

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 ところで加藤鷹は劇団ひまわり出身だったんですね。

 AV男優といえばアクロバティックな体位がしばしば披露されるが、セックスが芸になるなら、ほかにもいろんなことをパフォーマンスにしたらいいのにと思う。

 いまの時代、「カリスマ」になるには新しい分野を開拓するしかない。

 

7月21日(日曜) 夜

 「サトラレ」という映画の主人公は、自分の考えていることや感情が周囲の人に伝わってしまう能力の持ち主らしい。

 ぼくはどうも観る気にならないまま現在にいたっているのだが、知人によれば、「だから周囲の人は主人公の心中が言葉として耳に聞こえてくる」「でもこのことを主人公が知ったらショックで卒倒するから、周囲の人々はそしらぬ顔をし続けるよう国家から指示されている」とのこと。ふーん。

 でもこれってどうなんだろう。もしぼくがサトラレさんになったとしても、心の中はいつも、言語化不可能なモヤモヤした混沌状態であるような気がする。これがそのまま言語として伝播するなら、周囲の人はおそらく次のようなメッセージを受け取ることになるだろう。

「なんていうかこう、悲しいってわけじゃなくて、落ち込んでるのはそうなんだけど、でもどこかプシューっていう感じっていうか、モヘーっていうほうが近いかもしれないけど、ホッとするっていうのに近いけどそうでもなくて。しんどいけどグッと気持ちが張ところもあるような気がするし、全体的には言葉にはしにくいけど、こう、ショワショワ、ショワーシュゥっていうか、ボヘェー、ボヘボヘェーハゥ! っていうか、結局なんとも言えないっていうか。食べ物にたとえればシナチクみたいなフィーリングっていうか、動物だとアルマジロっていうか…(以下30行くらい続く)」

 こんなものを聞かさせるほうもたまったもんじゃないだろうが(だいいちワケが分からないだろう)、実際として考えると、人の感情なんてこういうもののような気がする。「嬉しい」「悲しい」てな言葉はよく使うけれど、これは自分の感情を既存の言語に無理やり押しはめてるだけ。それとも、ぼくの語彙が貧弱なだけなんだろうか。

 ちなみにワインはいつもジャケ買いです(sore-ga-doshita!)。

 

7月20日(土曜) 深夜

 職場の先輩宅で飲み会がありました。

 体調がすぐれないので酒は控えめにして、トマトジュースばかり飲んでいたのだが、いつものビールの感覚で飲み続けていたら気分が悪くなってきた。トマトジュースを2リットル。これは莫迦のやることである。

 あと先輩から「名倉ってエリンギィっぽいよね」と言われました。喜んでいいのか悲しんでいいのか分からず、ただポカーン。

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 さて本日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京金沢」。このまえ金沢をブラブラしたときに撮った写真をまとめてみたものです。金沢城や兼六園を紹介するはずだったのだが、気がつけば住宅街に迷い込んでいるのはいつものパターン。

 よろしければご覧ください。

 

7月19日(金曜) 夜

 職場で ACCESS (データベースソフト)を使って作業していた先輩が突然声をあげた。

 「えっ? はいたモード!?」

 一体なんのことかと思ったが、訊けば同僚たちもみな、それぞれ勝手な推測をして訝っていた。

 ちなみに正解は「排他モード」。LAN上で同時にデータベースを更新しようとすると生じる問題であるらしい。

 「排他」を連想した者が皆無だったのもどうかと思うが、「はいた」と聞けば「吐いた」しか思いつかなかったぼくも情けない。人の生活習慣や性格はふとしたところに現れるから要注意である。

 …と書いてて思ったが、「ハイターモード」ってなんだ?

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 その後、職場にかかってきた外線電話をとった担当者が、受話器を手で押さえながら叫んでいた。

 「わっ、この人、英語しか喋らないんですぅー!」

 それは単にガイジンからの電話だろ。

 

7月18日(木曜) 夜

 電車で隣にいたOL2人組みの会話。

 「○○さんっていつも輝いてるよねー」
 「そうだよねー。仕事も遊びも恋愛も全力投球だよねー」

 そうですか。輝いてはりますか。シャイニングでやんすか。

 そういや"Shine"ってローマ字読みすると「しね」ですね。 

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 レンタル屋で先日から借りたままになっていた『セブン』(ブラッド・ピット主演)を観た。

 いまさらセブンもないだろうと思われるかもしれないが、レンタル屋をぶらぶらしていたら偶然目にとまり、「そういや人気あったけど観てないなー」と思って借りることにしたのだ。

 というかほんとは、「同世代のうちにポピュラーな作品も観ておかなくちゃ」なんていう年寄りくさい気持ちでした(公開されてもう7年も経ってるのに同世代もクソもないんですが)。ぼくもすっかり老けたなァと思う一瞬。

 それはさておき、いざ観はじめるとオモシロくて、気がつけば画面にクギヅケ状態で見入っていた。そして物語は終末に向かって収束しはじめる。わー、これからどうなるんだろう。ハラハラするぜ!!

 …と一人で盛り上がっていたのも束の間。突然、強烈な既視感に見舞われた。あれ!? この展開知ってるぞ。実は○○が殺されてるってオチなんでしょこれ(いちおうネタバレを気遣ってみました。公開から7年も経ってるけど)。

 ストーリーは案の定ぼくが想像していた通りでした。思い返せば数年前、電器屋でDVDソフトのデモ放映をなんとなく眺めていたことがあり、そのとき流れていたのがこの映像だったのだ。タダだと思って最後まで見たのがいけなかった。

 まさに「意外なオチ」が待ち受けていたわけだが、こんな意外さはイヤだなぁとつくづく思いました。

 みなさんもデモ放映にはどうかご注意を。電器屋に入るときは目隠しと耳栓の装着をお忘れなく。

 

7月17日(水曜) 夜

 昨日はいろいろ用事がたまっていたので酒も飲まずに徹夜してました。おまけに今日は、勤務のあと夜まで研修。

 いままで極度の寝不足といえば、きまって前日に深酒が入っていたのだが、二日酔いのない純粋な寝不足とは新鮮な気分である。頭痛も吐き気もないのに意識がもうろうとしている状態。こういう感覚が人間にはあったんだ!

 これはちょうど、カップヌードルの肉だけを選び取ってまとめ食いしたときの感動に似ている。いままで麺と抱き合わせで食べていたものを純粋に食べると、こんなにも美味いのかというブルジョワジーな発見(自分の祖先は貴族だったんじゃないかと思うひとときである)。

 ただ、その後に残された「肉のないヌードル」は酸鼻を極める。この世のものとは思えない地獄の食べ物。このあたりも寝不足はカップヌードルに似ている。眠たい二日酔いは寝ていればすむが、眠気のない二日酔いはまさに地獄、いわば「ヘル」である。

 …ほんとはもっといいアナロジーがありそうなんですが、もうろうとした頭ではこれ以上なにも考えられません。

 寝不足だと、頭が悪いのを睡魔のせいにできるからいいね。それではおやすみなさいま。

 

7月16日(火曜) 夜

 なにごともないかのように更新。淡々と。

 痰痰麺なフィーリング。

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 血液型や星座で性格を判断する、といった趣旨の占いが氾濫している昨今。

 でも正直なところ、いまひとつ信憑性がない。

 ぼくは自分の血液型を本当に知らないのだが(両親が聞き忘れたまま現在に至っている)、親の血筋からA型かO型かのどちらかということになる。これ以外の血液型だったら親の勇気をたたえたいところである。

 で、血液型を訊かれるたびに説明するのも面倒なので、その場その場でテキトーに「O型です」「A型です」と答えているのだが、言うと決まって「やっぱり!」と言われる。「名倉みたいなヤツってO型(A型)の典型なんだよねー」なんてって。

 …ということもあって、ぼくは占いの類をあまり信じないことにしているのだが、相手の性格をなんとか簡単に知りたいと思うのも人間のさが。

 そこで提唱したい。「雰囲気占い」というのはどうか。

 その人と接していて感じる雰囲気や印象をもとに性格を判断するのである。今までの経験からいって、これならある程度の信頼性があるように思う。

 当たったからどうなんだ!? と言われるとつらいんですが、よろしければお試しください。

 

7月15日(月曜) 夜

 発泡酒でレッドアイ。

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 家にいるとゴロゴロしてばかりのぼくでありますが。

 浴槽にお湯がたまるのを待ってるときになると俄然、「この時間を有効に使わなくちゃ!」という強迫観念にとりつかれる。時間にして10分ほどなのに、それまで寝そべってマンガ読んだりしてたくせに、お湯を入れ始めた途端、

 なにがどう「この際だから」なのか自分でもよく分からないが、とにかく風呂の待ち時間はものすごい行動力が湧き出てくるわけです。おまけに自分でも驚くくらい集中力が続くので、いつも気がつけば浴槽からお湯があふれているというありさま。

 これはきっと、「いま作業に没頭したら時間を忘れてお湯があふれてしまう」という無意識の反動に突き動かされているのだ。

 …というわけで、仕事が切羽詰ってきたときは一晩に10回くらい風呂に入ることにします。

 もし将来、ぼくに孫ができたら、「おじいちゃんの知恵袋」として伝えようと思う。 ヤバくなったら風呂をわかせ。

 

7月14日(日曜) 夜

 一日中ずっと家にいた一日。三人分パックのミートソースを開封したので、三食連続でミートスパゲティでした。

 これもシングルライフの醍醐味ですな。もし同棲相手なんかがいたら大変なことになっていたところである。

  1. まずは二人でミートスパゲティを食べる。あとには一人分だけ残る。
  2. 残った一人分をどちらが食べるかでケンカになる(もちろん両者とも食べたい)
  3. 刺殺事件に発展

 「殺人事件に巻き込まれるのもたまにはいいかな」という気もしてきました。平和な一日です。

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 ぼくは極度の面倒くさがりなので、MDに音楽を録音してもほとんどタイトルを書き込まない。おかげで何十枚というディスクがシールさえ貼らない状態でラックに積まれている。

 シールの倹約という点では非常に効率的なのだが、問題は聴きたいアルバムをどうやって探すかである。

 いつもそのとき安売りのMDを購入しているので、幸いメーカーにはばらつきがある。それに加えて、各ディスクには小さな汚れやキズがついているのものもある。こうやって「メーカー」+「微妙な手がかり」を頼りにアルバムを識別しているわけでありますが。

 いざとなると、これがメチャクチャ難しいんである。全体の雰囲気でなんとなく分かることもあるが、たいていは電灯にかざしてキズを探したり、「ここに汚れがついてるのはどのアルバムだったか…」と何分も考え込んでるありさま。ほとんどトランプの神経衰弱である。

 こんな七面倒くさいことを毎日繰り返しているぼくは、もしかすると面倒くさがりとは対極のマメ人間なのかもしれない。MDにタイトルを書き込むような輩こそ、面倒なことから逃避しようとする、安直極まりない堕落した人間ではないだろうか。

 みずから苦労を買って実践しつづける自分の姿をふと、高僧ガンジーに重ねあわせてみる。…符合!

 

7月13日(土曜) 午後

 二日酔いで死にかけております。

 昨夜は職場の食事会があり、えらく上等な懐石料理(8000円のコース料理!)を食べにいったのだ。手の込んだ前菜に始まり、お刺身や焼き鮎、そして珍味の数々。

 …だが、どんどん運ばれてくる日本酒を飲み続けているうちに、気がつけば前後不覚になっていた。足元はふらつき、トイレに行っては何度も吐くという体たらく。後半はなにを食べたのかすら記憶にありません。おまけに今朝は猛烈な下痢と頭痛。

 贅を尽くした懐石料理は、こうやって味わうのがマナーなのである。

  1. まずはじっくりと口で味わう
  2. のど元を逆流するゲロをもう一度味わう
  3. 消化されずに出る下痢便を肛門で味わう

 ごちそうを食べては吐き、を繰り返していた中世の貴族のような生活であります。 

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 さて本日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回は「いまどきの京ハニベ」の後編。ハニベ巌窟院の中枢部ともいえるハニベ地獄(洞窟ギャラリー)に足を進めてきたレポートです。こういう名所を企業ページで広く紹介できることの幸せ。

 よろしければご覧ください。

 

7月11日(木曜) 夜

 久しぶりに晴れたので洗濯物が乾いて嬉しい。

 そういや以前バイトしていた職場の先輩(正社員・男性)に、「剛の者」なMさんというのがいた。

 いつも言動に余裕がにじみ出てるような、とにかく人間的な器のデカさを感じさせるだった。何ごとがあっても動じないという安心感から会社からの信頼も厚く、同僚たちを尻目にどんどん昇進していったのを思い出す。

 ぼくが「ビッグな人間」への憧憬を抱きはじめたのもこの頃だった(いまだに正反対な人間だけど)。

 そんなある日。

 いつものようにみんなで仕事していたら、急に大粒の雨が降り始めた。その瞬間、Mさんの表情が一変した。いつもの余裕は吹き飛び、すっかりうろたえてオロオロしはじめるMさん。こんな取り乱した姿を見るのは初めてである。

 いったい何が起こったのかと驚いたぼくらは、おそるおそる理由を訊ねてみた。したらばMさん、

 「今日は降水確率0%って聞いたから、ベランダに布団を干して出てきたんや! ああ、もうアカンかもしれん…」

 ビッグなMさんを動揺のどん底に突き落としたのは「布団」だった。おそるべき布団。ふとん。

 以来、布団を干すたびにMさんのことを想い出す。

 今ごろは海外を飛び回ってらっしゃるのかなァ。ふとん干しにだけは細心に「テイクケア」しながら。

 

7月10日(水曜) 夜

 昨夜は飲みにいってたので更新できませんでした。まだ疲れてるのでカレーヌードルで夕食を済ませる。

 カップヌードルの汁は不健康そうなのでなるべく残すようにしているのだが、カレーヌードルの汁だけは、カレールーという意識があるのでつい全部飲んでしまう。

 カレーさえ入っていればなんでも御馳走である。

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 病気のハンドブックみたいな本を読んでたら、ある医者が「くも膜下出血」について次のように書いていた。

くも膜下出血は、これまでに味わったことのないような痛みを感じるのが特徴です。それは金属バットで思い切り頭を殴られたような激しい痛みです。

 これを書いた人はやはり、金属バットで頭を殴られたことがあるんだろうか。

 「金属バットで思い切り頭を殴られたことのある医者」

 こんな医者にはあまりかかりたくないと思った本日でした。

 でも上の記述が正しいなら、くも膜下出血になったとき自分で判断できるよう、だれしも一度は「金属バットで思い切り頭を殴られ」ておくべきですな。脳震とう起こして、殴られたときの記憶などないかもしれないけど。

 

7月8日(月曜) 夜

 これでもぼくは負けず嫌いなところがある。

 先日も、知人と話していたら「どれだけ自分が怠惰か」という話になった。

相手:「休日はだいたい昼間でゴロゴロしてますね」
ぼく:「いやぁ、ぼくなんて夕方まで寝てることのほうが多いですよ」
相手:「食事以外はずっと布団で過ごしてることもありますけど」
ぼく:「そんなの健全ですよ。食事するのも面倒で13時間ぶっ通しで布団でゴロゴロしてたことあります」
相手:「でも、食事以外は布団っていうのが一週間続いたんですよ」
ぼく:「ぐっ…。だってぼくなんて、13時間のゴロゴロのあと就寝したんですから!」

 なにを競争しているのかと思うと情けない気分になってくるが、負けず嫌いの気持ちは大切にしなければならない。人間、向上心を失ったらおしまいである。

 上の勝負に勝つためにも、いつかは寝たきりになってやる所存であります。

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 ただ、いくら負けず嫌いといっても、世の中どうにもならないことだってある。

 たとえばぼくは腕相撲が異様に弱い。今まで20戦くらいしたが(うち8人くらいは女性)、勝ったことは1回のみ。

 こういうときは「負け率」で堂々と勝負する(これで負けたことは一度もない)。ぼくの男らしい一面を垣間見ていただけたなら幸いです。

 勝つためには手段を選ばず。ここには感情が入り込む余地など微塵もない。勝負の世界は冷徹なのだ。

 

7月7日(日曜) 夜

 昨夜は愉快な仲間たちと飲んでたので更新できませんでした。

 昨日の夕方、飲み会の直前まで自宅でゴロゴロしていたら、仲間の一人から電話がかかってきた。

 「あ、名倉? 実は待ち合わせの時間が変更になったんだけど、もう家出た?」

 ちょっと待て。こうして電話に出てるんだから、まだ家にいるに決まってるだろ。それとも特注の長い電話コードを引っぱって外出しているとでもいうのか。まったく莫迦はこれだから困る。

 …と優越感にひたっていたのだが、あとから聞けば「つい携帯電話のつもりで喋ってしまった」とのこと。他の者はみんな携帯を持ってるので、同じ感覚で連絡してきたようなのだった。

 優越感は瞬時にして劣等感に。ワイヤレス機能すらついていない我が電話機を眼前にしてちょっと気が滅入る。

 せめてコードを透明タイプにしようかと考え中です。

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 さて昨日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京ハニベ」。石川県のハニベ巌窟院に足を運んできたレポートです。伊勢の国際秘宝館を訪れたときの興奮がよみがえってくるような、非常にナイスなスポットでございました。

 よろしければご覧いただけると嬉しいです。毎回こういうのを書きたいんだけど、取材の時間がないのが悔しい。

 

7月5日(金曜) 夜

 金曜日の夜が一番たのしい。ひとり発泡酒。

−−−

 たまにはK山の話でもしようか(実はこの言い回し気に入ってます。もっさいですか)。

 K山というのは学生時代からの男友達である。彼は当時からプレイボーイで、車を乗り回してナンパしたり、バーで隣テーブルにいる子を口説いたり、家でヤドカリを飼ったりと好き放題に遊んでいた。

 おまけにK山は、ナンパした子をいつもそのままラブホテルに連れ込んでいたらしい。うわー畜生!!

  「ヘンなことは絶対しないからって約束すんだよ。で、そのまま最後までヤッちゃう」

 なんて男だ。約束を破ってあらぬ行為におよぶケダモノめが。

 …と憤慨していたのだが、考えてみれば、彼らは普通にセックスしてるわけである。セックスなんて老若男女だれでもしてるんだから、確かに「ヘンなこと」ではない。というか「おそろしく当たり前の行為」である。

 ラブホテルの中ではおそらく、以下のようなやりとりがあったものと推察される。

K山:「ヘンなことは絶対しないから」(と言いながら蜜壷を愛撫)
相手:「絶対しないって約束する?」
K山:「マジ約束する!」(と言いながら陰茎を生挿入)
相手:「…あんっ。ヘンな真似したら私、帰るよ!?」
K山:「大丈夫だって。オレ意外と紳士なんだぜ(スコスコスコ…)。うっ、イク!」(生出し)
相手:「あ、もうイッちゃったんだ。あたし、K山クンのこと信じるよ」(フローバックをティッシュで拭きながら)

 こうしてお二人の間には、新しい命が誕生しましたとさ。めでたしめでたし。

 彼の言う「ヘンなこと」とは、「ひとつ屋根の下で寝ながら指一本触れない」ということだったのかもしれません。これは確かに、ちょっとヘンかもしれない。

 K山は約束を守る男だった。こういう男がいる限り、ハニベ巌窟院は安泰である。

 ハニベ巌窟院のレポートは明日の某企業コラムに書きました。早くアップされないかなー。

 

7月4日(木曜) 夜

 たまにはコップの話でもしようか。

 職場では各自がマイコップを持参して、お茶やコーヒーをセルフで入れて飲んでいる。その後の洗い物も当然セルフなのだが、今日、同僚から指摘された。

 「名倉さんって自分のコップ洗ってます? 洗ってるところを見たことないんですけど…」

 ぐっ。誰も見てないと思ってほとんど洗わずに毎日使い続けていたのが、どうやらバレバレだったらしい。ぼくとしてはお茶で毎日洗っているつもりなのだが(洗い物が大嫌いなんである)、常識にとらわれがちな同僚たちのこと、このままでは不潔な男だと思われかねない。

 そこでとっさに言い訳しておいたわけです。

 「たしかに帰宅時は洗ってないけど、毎朝飲む前に洗ってるんです! 前夜に洗ったらホコリが積もって不潔でしょ!」

 すると同僚たちは「なるほどねー」「さすが潔癖症はちがうよね」と納得の顔。我ながらテキトーなこと言ってるなァと思うが、結果よければすべてよし。コップを洗ってないおかげでポイントアップである。

 そのかわり、これから毎朝、洗いたくもないコップを洗わなくちゃならない。おまけに一晩置いてると、こびりついた茶渋がなかなか落ちなくて大変なんだ。ああめんどくせえ。

 こんなことなら、帰り際に毎日ちゃんと、「洗ったふり」をしておきゃよかった。

 

7月3日(水曜) 夜

 少し前、あるラーメン屋に足しげく通っていた時期がある。

 とりあえずは美味しいので喜んで食べていたのだが、気になる点がひとつあった。日によって微妙に味が違うのである。あるときはスープがこってりしているし、あるときは塩気がうすい。また、こってり加減や塩気はいつもどおりでも、なんとなく不味いという日もある。

 地元ではけっこう有名な店なのだが、やはり味にはムラがある。同じく常連客の知人たちにこのことを言っても同感してもらえなかったが、ぼくの正確な味覚はだませない。ああ、繊細な舌を持った者の孤独と葛藤。

 …と一人でまんざらでもない気分に浸っておったわけですが。

 その後、いろんなモノの味が日によって違うことに気がついた。カップヌードルも発泡酒も、日によって驚くほど味が異なっているのである。腹が減ってるときは味にグッと深みがあるし、飲みすぎた翌日はどうもスープが薄くて不味い。なるほど、こういうことだったか。

 ぼくの味覚は人並み外れてテキトーだったみたいです。イイカゲンな舌を持った者の孤独と葛藤。

 もう自分にはだまされないぞ。

 

7月2日(火曜) 夜

 「名倉って仮性包茎っぽい顔してるよね」と言われたこと数回。

 これって遠まわしな褒め言葉ですか!? 信じていいのですか?

−−−

 酒があると飲みすぎていけないので、最近ガムを買ってきて食っております。

 だがガムも、あったらあるだけアッという間に食べてしまう。かみ終えたのを吐き出すのももどかしく、どんどん新しいのを追加していくので、最後にはものすごくデカいガム玉になっているありさま。

 そういや小学生の頃は爪かみの癖があった。爪もあったらあるだけ食べてしまうので、いつもギリギリまで爪を切りそろえていたのを思い出す(でないと噛んで爪先がボロボロになって恥ずかしい)。でも全部切るのは惜しいので、小指の爪だけは噛む用に残しておいたりしていた。

 発泡酒2缶しか冷蔵庫に置かないようにしている今の自分の行動パターンと全く同じだ。爪が発泡酒になってはいるが、本質はなにも変わっちゃいない。

 口唇期性格もいろいろもっさくて大変である。

 

7月1日(月曜) 夜

 先日購入した腕時計の針を4分進めて使っている。

 1分進めて使ってる人はたまにいるが、4分というのはどうなんだろう。ちょっと恥ずかしいカスタマイズである。

 でも世のなかには、次のような人だっているかもしれない。

 そういや「謎が多い男はモテる」の法則もあると聞く。

 初デートには「35分遅れてるタグホイヤー」などをさりげなく光らせて臨みたいものだ。

−−−

 大学院時代、「わたし、太宰さんの本は全部読んだの」が口癖のAさんというのがいた。

 いい歳こいて太宰治もないだろうと思うが、それより気になったのは「太宰さん」という言いかただった。なんで「さん」づけなんだよ。

 自分との距離の近さをアピールしたい気持ちが出ていたのだと思うが、それにしたって太宰治はとっくに死んでいるだろう。こういう人はミュージシャンなんかも「さん」付けで呼ぶ傾向があるが、だったらストゥージズのイギー・ポップは「ポップさん」なのか。

 「ジャガーさんの腹踊りはいつ見てもクールよね!!」

 ちなみにAさんは、ことあるたびに赤川次郎を小バカにしていた。これも恥ずかしい。

 でも辻仁成をバカにするのはOK。

 


   2002年6月のプチ日記 

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