2002年11月のプチ日記

11月30日(土曜) 昼

 昨夜は飲みに行ってたので更新できませんでした。それはさておき。

 職場には電気湯沸かし器があり、みんなこれでお茶を飲んでいる。だれでも自由に使えるようになっているので、違う部署の人が来たりしたときはセルフサービスでお茶を飲んでもらっている。

 しかし先日やってきた人は湯沸かし器の使いかたが分からず戸惑っていた。そこで操作法を教えてあげたのだが、その途端ものすごい怪訝な顔をされてしまった。「え? いずゆ?」

 

 ぼくは「ロックを解除してから出湯ボタンを押すんですよ」と説明したのだが、「出湯」を「いずゆ」と言っていたのだ。でもよく考えたら、電気湯沸かし器のボタンにこんな読みかたはないだろう。これではまるで「いにしえの時代の高貴な電気湯沸かし器」である。

 そういや以前、本なんかの「初出」を「はついで」と読んで恥をかいたことがあるのを思い出した。ちょっと気を抜くとなんでも「いにしえ化」してしまうので、これからは気持ちをひきしめて日常生活にのぞもうと思います。

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 ところでポットのことをいまだに「魔法瓶」とも呼んでる人をたまに見かける。

 保温するのが「魔法」って、ちょっとショボくて気分が和みますな。

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 さて本日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京さる」。おさるさんを見るために、京都・嵐山のモンキーパークに足を運んできたレポートです。べつにさるが好きなわけじゃないが、とにかく自分探しの旅のつもりで見物してきました。

 よろしければご覧くださると嬉しいです。

 

11月28日(木曜) 夜

 昔買った雑誌を読み返してたら、「暮らしに役立つ豆知識」なる情報コーナーがあった。

 たとえば「鼻づまりを治す方法」「あくびを止める方法」なんてのが紹介されてるわけである(ちなみに前者の答えは「つまった鼻を上側にして横に寝転がる」、後者の答えは「上唇をなめる」)。

 で、こいつは便利だと思って熱心に読んでいたところ、「みかんの皮をむかずに房の数を知る方法」というのが紹介されていた。これによれば、てっぺんの緑の部分を取って、内側にある白い筋の数をかぞえればいいという。

 たしかにちょっとした豆知識ではあるが、これって「暮らしに役立つ」情報なんだろうか。知っていたからといって、何がどう便利なんだろう。

 …と一人で憤慨していたわけですが、世のなか、何が起こるかわからないのもまた事実。ひょっとしたら将来、なぜか国際テロ組織に拉致された末、ライフルを持った兵士からみかんを突きつけられて宣告されるかもしれない。

 「ヘイ、この腐れジャップ! こいつの皮をむかずに房の数を当てろ! 当たったら勘弁してやるけど間違ったら銃殺します!」

 可能性はゼロではない。こう考えると、たいていのことは知っておいて損はないのでがんばろうね。

 って、いったい誰に向かって言ってるんでしょうか。それでは。

 

11月27日(水曜) 夜

 職場で居眠りしてしまうのをなんとかしようと「カフェロップ」(眠気防止薬)を買った。

 一日のカフェイン摂取量が500mg(リポビタンDの10本分に相当!)のドロップ薬である。勤務中ついウトウトして能率が下がり、納期が遅れがちだった昨今であるが、これがあれば一挙に覚醒。どんどん仕事が片付いていくんじゃなかろうか。

 …と考えて服用してみたところ効果はてきめんだった。いくら寝不足でも全然眠くならないんである。よーし、たまってる仕事を一挙にやっつけるぞォ!!

 だがコトはそううまく運びませんでした。というのも、意識が冴えると仕事していても余計なことばかり考えてしまい、遅々として進まないんである。パソコンに向かっていても頭が妙に稼動しているものだから、今夜の夕食の献立を考えたり、洗濯物のことを考えたり、電気ストーブ購入プランの詳細を練ったりと「マルチタスク」してしまい、肝心の仕事にまで余力が回らない。

 おまけに重大な欠点が発覚した。ずっと起きていると勤務時間が長くてしかたないのだ。長時間働いた(気がする)うえに仕事がはかどらない。いったいぼくは何をしているのか。

 これからは余計な色気を出さず、マイペースで居眠りしながら勤務しようと思います。

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 ところで、ウトウトしながら「気がつけば仕事が進んでいた」ときって、ものすごく前衛的な作業内容にびっくりする。

 先日もふと目が覚めると、会計の金額記入欄に「輪が出て、魚が」と入力してありました。

 夢を見ていたんだろうか。どんな夢なのか見当もつかないけど。輪が出て、魚が。

 

11月26日(火曜) 深夜

 さっき、四条木屋町の交差点付近で『五体不満足』の著者の人を見かけた。

 ひさしぶりに出会った有名人なのでちょっと興奮し、デジカメを取り出そうとしてふと手を止めてしまった。こういう人をむやみに撮影すると好奇の目で見てるみたいでちょっとマズいんじゃないか。もしかすると周囲からものすごく白い目で見られてしまうんじゃないか。

 でもせっかくの有名人なので、そのままやりすごすにはもったいない。ひとつサインでももらってみるか。

 …と一瞬思ったものの、考えてみたら彼は果たしてペンを持てるのだろうか。本は書いているが、口述筆記か、特別なパソコン入力装置を用いている可能性が高い。口述筆記でサインをもらったってちっとも嬉しくないし、パソコンでのサインも同様である。

 なーんだ、仕方ないや。

 でも今考えると、ぼくは彼の名前すら覚えていないのでした。ええとなんだっけ。クニタケ君だっけ? いやオトタケ君か? それともオトクニくんだったか。…この調子だとぼくは、「あのー五体不満足のかたですよね?」なんて声をかけていたに違いありません。

 よく知らない人のサインなどもらおうとしないで本当によかった、と胸をなでおろした本日でした。

 

11月25日(月曜) 深夜

 出張で東京まで行ってました。

 京都−東京間は往復6時間弱かかるので、前から読もうと思っていた文庫本の小説をかばんに忍ばせていったわけですが。

 冷徹かつ可哀想な描写という、ぼくの琴線に触れるストーリーだったため、読んでるうちに柄にもなく目頭が熱くなってきた。

 「新幹線の車内で文庫本を読みながら泣いている28歳男性」

 うわーマズい。ぼくのことなど他の乗客は気にしてないのかもしれないが、これは自分の許容範囲を超えている。ちくしょう、一体どうすりゃいいんだよ!?

 なるべくエロいことなど考えて感傷を鎮めてみるのだが(車内で勃起したときとは正反対である)、こういうときは何を考えても哀しい方向にいってしまうからたちが悪い。エロビデオのことを思い出しても「きっとつらい事情があったに違いない…」とか勝手に想像してはウルリ、このまえ拝見したパンチラに思いを馳せても「もしあの子が強姦されていたら心の傷は…」とか妄想してウルリ。

 ここまで悲壮なパンチラも珍しいが、とにかく何をしてもダメな状況に陥ってしまったわけです。そうこうしている間にも容赦なくまぶたにたまり続ける大粒の涙。くー、このままじゃオレはポエミーラビットじゃねえか!!

 …というわけで新幹線の車内、延々と「あくびするフリ」をし続けたのでありました。涙がとまらないので20回くらいは連続で「あくび」しただろうか(これはこれでまた別の病気みたいだけど)。

 ちなみに、何の本で落涙したのかはここには絶対書きません。ぼくにも失いたくないものはありますので。

 

11月24日(日曜) 深夜

 昨夜は飲みに行ってたので更新できませんでした。マオタイ飲んで尿までマオタイ臭くなりながら。

 …というわけで本日、二日酔いの頭を抱えながら近所をブラブラ散歩していたら、こんなカフェを見つけた。

 えらく軟派な武家屋敷もあったもんだ。「和洋折衷」「異文化交流」と言えば聞こえはいいが、これはちょっと無理ありすぎじゃなかろうか。この線でいけば「セニョール新撰組」だって「ラポール忍者」だってなんでもアリである。

 ちなみに定休日は木曜と書いてあるが、今日(日曜)もカフェド武家屋敷は閉まっていた。さては鎖国中か。

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 さて昨日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京宝ヶ池」。紅葉目当ての観光客でごったがえす名所を避け、マイナーなスポットとして知られる(?)宝ヶ池に足を運んできたレポートです。

 池には猫がいたので、よろしければご覧くださると嬉しいです。

 

11月22日(金曜) 夜

 家族などに保険金を残すために自殺する人が結構いるらしい。

 だが自殺の場合、基本的には保険金が支払われない。そこでなんとか事故死に見せかけるため、登山中の転落死を装ったり、車でガードレールに激突したりと、いろんな工夫をこらすんだという。

 とはいえ保険会社も商売である。支払額を押さえるため、それが自殺であることをなんとか立証しようとする。たとえば車の事故の場合、なにも荷物を積まずに運転しているのは不自然だとか、そういうところまでチェックされるらしい。

 となると、自殺で保険金を残そうとするなら、車の積荷にも充分に配慮しなくてはいけない。

 これから自殺しようとする人がドーナツお徳用パックなど買わないだろうし、コンドームの買いだめもしないだろうという算段である。いよいよ死を観念した人がダンベルセットを購入することもまずないだろう(いたら見てみたい)。これを逆手に取るわけである。

 ただ、こういう小細工が蔓延すると逆に怪しまれそうだから要注意かもしれない。

 「ドーナツにコンドームに宝くじまで買っているとは、あまりにも出来すぎている! これは自殺だ!」

 で、第二世代の偽装工作は「新しい炊飯器を買っておくこと」とかになってたり。さらにそれが知られて、「新しい炊飯器の背後には自殺があると心せよ!」なんてことになってたりして。

 自殺するのも大変な時代になってきました。考えすぎて気が滅入り、死ぬ気力すらなくなってしまいそうな勢いです。

 

11月21日(木曜) 夜

 高校生の頃、「辛いもの好きなオレ」をセールスポイントにしているA君というのがいた。

 とにかくなにかをウリにしたがるのが思春期である。それは「柿が食べられないこと」であったり「ウイスキーをボトル一本飲めること」であったりするわけだが、A君の場合は辛いものを食べても平気なことがウリなのだった。

 そんなある日。みんなでピザ屋に行ったら、A君は「オレこういうの平気やねん」と言いながらタバスコをたくさん振りかけ始めた。みんなの「オー!」という歓声。それが嬉しくて「もっとかけても平気だぜ」とうそぶくA君。

 周囲の者も調子に乗ってタバスコをかけまくり、気がつけばタバスコまみれの真っ赤なピザになっていた。それを平気な顔して食べ続けるA君だったわけですが。

 しばらくたって店のトイレに入ったら、A君は涙目になりながら洗面台の水を喉に流し込んでいた。ぼくと目があった彼は、なにも言わずにただ水を飲み続けた。ぼくなどには言い訳する必要などなにもなかったようである。

 A君はきっと「女子生徒にモテたかった」のだと思う。思春期のセールスポイントなんて所詮そんなものなのかもしれない。

 タバスコまみれのピザを食べて子孫繁殖を目論む。辛い話だなあ、と今ごろになってふと想い出す。

 

11月20日(水曜) 夜

 さいきん物覚えが悪くて困っている。

 酒を飲んだときの記憶が飛ぶというのは以前からよくあったが、近ごろでは素面のときの記憶も怪しかったりする。いよいよアルツハイマーの域である。

 このことを実感するのが、ぼくの発言に対して「それ前にも言ったよ」と相手から指摘されたときである。この歳でアルツというのも情けないので、こういうときは慌てて「あ、そういや前にも言ったよな」なんてフォローしているわけです。

 ただ、「それ前にも言ったよ」があまりに頻繁になるとさすがに恥ずかしい。

 そこでここ数日、あらかじめ先手を打って相手の指摘を封じ込める作戦に出た。何か発言するときにはいつも、「これって前に言ったかもしれないけど〜」と前置きするのだ。これなら同じことを二度言っても大丈夫である。

 …と考えて実行してみたところ、大きな問題につき当たった。前に一度も言ってないことにまでこのフリをつけてしまうので、ますますアルツだと思われてしまうんである。これはマズい。

 仕方ない。今後はどんな場合をもフォローする前フリをつけることにしよう。

 「この話、前に言ったかもしれないし、言ってないかもしれないけど〜」

 

11月19日(火曜) 夜

 発泡酒の酒税見直しが話題になるときだけ、政治に興味を持っている自分。

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 今朝ちょっと風邪気味で寝坊したので、自宅から駅まで小走りしていたわけですが。

 大通りの歩道に出たところでちょうど、自転車にのって空缶を集めているホームレスに出くわした。これだけなら別になんてことないのだが、自転車のスピードがぼくの小走りとまったく同じ速度なので、せまい歩道をホームレスと併走するはめになってしまったんである。

 駅までは一本道なので別のルートに変えるわけにはいかない。といって走るのをやめれば電車に乗り遅れてしまう。全力で走って振り切る手もあるが、風邪気味なので気力が出ない。ダッシュしたところですぐバテて追いつかれるのは目に見えている。

 …というわけで、150メートルほどの距離をずっと、ホームレスの自転車と並んで走り続けたのでした。すぐ後ろを走っていたので、ホームレス特有のすえたような臭いをほんのりと嗅ぎながら。

 なんだか恥ずかしいなァ、みんなから注目されてるんじゃないかなァ、と思って周囲を見回してみたんですが、ぼくのことを気にしてる人など誰もいなかったのでホッとしました。きっと親子だと思われてたんだろう。

 

11月18日(月曜) 夜

 会社帰りの電車で、向かいの席にカップルが座っていた。

 女:「○○クン、もしかして昨日のこと気にしてる?」
 男:「…………(およそ10秒間の沈黙) いや、ぜんぜん気にしてないって!」

 おいおまえ、ぜったい気にしてるだろ。気にしてるかしてないか10秒間も考えてる時点でアウト。

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 知人Sさんの母は喘息持ちの虚弱体質なのに、歌をうたうのが大好きなのだそうだ。

 で、料理を作ってるときなどはいつも鼻歌をうたっておられるらしいのだが、よく途中で発作に見舞われ、猛烈な咳き込みに苦しむことになるのだった。喘息持ちのつらさである。

 だがSさんの母は大の歌好き、喘息発作にのたうち回りながらも鼻歌をやめようとしないのだ。「ふーん、ふんふーん…ゴホゴホゴホッ!! ゴボゴボゴボ!! …ふふ〜ん、ふんふ …ゴホッ、ゴホゴホッ!! …ん ふーんふん グホグホグホッ!!」。

 まさに命がけの鼻歌である。鼻歌のせいで寿命を縮められないことを陰ながらお祈りしてます。

 

11月17日(日曜) 夜

 ここ数日、いろいろバタバタしてて更新できませんでした。

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 先日喫茶店で時間をつぶしていたら、隣テーブルにいた女性客二人のうち、一人がシクシク泣き始めた。

 なにかと思って耳をそばだてて盗み聞きしていたら、おおよその事情が判明した。泣き出した女性は最近彼氏と別れたらしく、そのことを女友達に話しているうちに感極まって落涙してしまったようなのだった。

 おまけに泣いている女性はハンカチを持参し忘れたようで、これに気づいた相手の女性があわてて自分のハンカチを差し伸べたのだが、よく見ればそれは「けろけろけろっぴ」のキャラクターものだった。失恋の涙をぬぐうハンカチとして、これはちょっとどうなんだろう。

 当の本人もこれは受け入れられなかったようで、ハンドバッグから自分の「ティッシュ」を取り出して涙を拭いておられた。でもこれも「武富士」のポケットティッシュ。二人の間にはいよいよ気まずい雰囲気が漂いはじめる。ようし、その調子だ!!

 涙もいろいろ大変なのだな、と思いました。

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 さて本日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京嵐山」。京都の紅葉名所として知られる嵐山を散策してきたレポートです。紅葉にはあまり興味がないので、周辺のラブホテルや神様などをおもに見てきました。

 よろしければご覧くださると嬉しいです。

 

11月15日(金曜) 夜

 昨夜は飲んでたので更新できませんでした。

 それはさておき、朝の四条通を歩いていると最近、いつもシップスのダンボールを見かける。

 なにかと思えばホームレスの住処。ブランド物でかためるとは、なかなかぜいたくである。バーバリーとかアカスキュータムとかのダンボールハウスもそのうち出現するんじゃないだろうか。

 でもきっと、家主にとっては、単に「分厚くて丈夫なダンボール」を選んでるだけなんだろうなァ。

 ブランド物のクオリティーを実証する光景である。イメージダウンまっさかりなのが痛快。

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 最近バタバタしていて、こんな日記ばっかりですみません。あーバタバタ。

 

11月13日(水曜) 夜

 大学入学当時の日記を読み返すたびに赤面。セルフSMプレイに励んでおります。

 そのなかに次のような記述があった(アフォリズムのつもりか?)。

愛を試すことについて: 相手の愛情を試すと、試せる部分もあるけれどお互い消耗する。試されたという事実は残り続けるから。これはちょうど、バッテリーチェッカーにかけた電池が磨耗するのと似ている。

 わー、なに書いてんだオレ。唐突に愛について語り始めたかと思えば、結論は「愛はバッテリーチェッカーに似ている」。バッテリーチェッカーってあんた、ポエムなのか理数系気どりなのかどっちなのよ。

 みなさんも是非、機会があれば口説き文句に使ってフラれてくださると嬉しゅうございます。

 星空の降る夜、橋の下で抱き合いながら、「愛ってさァ、けっきょくバッテリーチェッカーに似てるよね…」。

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 というかぼくは、どうしてここまで自分を落とさなきゃならないんでしょうか。たかがWeb日記ごときで。

 理不尽さに気分が悪くなってきたので本日はこのへんにて。

 

11月12日(火曜) 夜

 今日の夕食は手抜きして、レトルトカレーとみそ汁でした。

 しかしものは考えよう。「インド丼定食」と考えればなかなか豪華な食事である。みそ汁がつけばなんでも定食になるの法則。

 ちなみにスパゲティ定食もぼくもレパートリーの一つです。

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 ユニットバスは湯船に湯をはらないので、水道代が普通の風呂より安くすむと言われる。

 だが、湯船に湯をはらないと気がすまない性分の同僚Sさんは、入浴のたびに大変なことになっているらしい。

 なんとなれば、ユニットバスには浴室がないので、湯船を満たしてしまうと入浴前に身体を洗えない。ってことはお尻なども洗わないまま浸かることになり、湯船がうんこスープ状態になってしまう。かといってシャワーしてから湯船が満ちるのを待っていたら、身体が冷え切って風邪をひいてしまう。

 そこでSさんは、まず満たした湯船に浸かって身体を充分暖めてから、うんこスープな湯を抜きながらシャワーで身体を洗うのだそうだ。その後に、もういちど湯船にお湯をはり、クリーンなお湯で存分に入浴を楽しんでいるというのである。

 ユニットバスのくせに、入浴のたびに二度もお湯をはりかえている始末。

 こういうばかな人がいるから世のなか平和なんだろうなと思わされた一件でした。

 

11月11日(月曜) 深夜

 先日東京に行ったとき。

 夜中の新宿界隈(百人町のへん)を一人でブラブラしていたら、立っていた外人女性に声をかけられた。

 「ヤスイヨ ドウ?」

 どうみても娼婦である。「生鮮野菜100円均一」なんて話じゃあないだろう。こりゃヤバいと思ったぼくは、とっさに「ノーノー」と言って足早に立ち去ったわけですが。

 「ヤスイヨ ドウ?」
 「ノーノー」

 なんでこっちが英語しゃべってんだ!?

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 阪急電車の通勤定期を普段使っている。

 でも仕事の関係で京阪電車に乗る機会がたまにあり、自動改札を通るたびに余計な妄想が頭によぎるから困る。

 「手持ちの阪急定期が偶然、京阪のフリーパスとして誤認識されちゃったりしないだろうか」
 「もしそうだったら一挙に大もうけじゃあないですか!」

 実は高校時代に一度試したことがあるんですが、案の定ダメでした。改札機が閉まってピンポーンと音がなる中、「つい間違って入れてしまった」フリをして頭をかいてみたりして。

 それによく考えたら、万が一阪急の定期が京阪フリーパスになっても、ちっとも「大もうけ」じゃない。たまにしか乗らないんだし。

 

11月10日(日曜) 深夜

 京都市内の中心、四条河原町で見つけたビルディング。

 無機質なビルを少しでも京都っぽくしようという心意気は分かるが、これはちょっとどうなんだろう。どう見ても無理ありすぎ。いままで気付かなかったが、こんなまぬけなビルが上空にそびえていたのかと愕然としております。

 真下の歩道にはスーツ姿のサラリーマンや、手をつないで歩くカップルの往来。

 このビルの下を歩くとき、すべての人が喜劇になる。

 

11月9日(土曜) 深夜

 本日のカーニバル。

 クリーニングカーニバル。洗濯祭りである。

 興奮した群集たちが一堂に会し、雑踏と喧騒のなか華やかに行われる一大イベント。洗濯物を持参した面々の怒号が飛び交う。「ようーし洗うぞォ!」「洗濯機のスイッチを入れろォ!!」「じゃんじゃん入れろォ!」「次は干すぞォ!」「干しまくるんだァー!!」。

 …というような光景を連想された向きも多いと思いますが、上の写真は単なるクリーニング屋の看板です。どういうセンスでネーミングされたのか、いまひとつ分かりません。

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 さて本日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京るりけい」。京都・丹波地方の名勝「瑠璃渓」を訪ねてきたレポートです。紅葉で知られるスポットなんですが、行ったのが10月初旬だったので紅葉など一枚もなくて恐ろしくショボいことになっております。

 よろしければご覧くださると嬉しいです。

 

11月8日(金曜) 深夜

 なんだかかんだか、これでいいのかという生活を送っておりま。

 ちょっとお酒を飲んでいたので文章を書くのが非常に億劫になってるんですが、さっき思い出したこと。小学校の頃、五十音をなんとかすべて人名に当てはめようとやっきになっていたことがあった。さしずめ「現代版人名いろはにほへと」である。

 「あいうえお」「かきくけこ」まではバッチリなのに、サ行が全然ダメで気が狂いそうにイライラしていたのだった。キーッ。せっかくここまで順調にきたのに!!

 でも今振り返ると、「さしすせそ」なんて名前のヤツなど絶対にいないと断言できる。

 あと、「愛植夫」も「柿久毛子」も断じていない。マジでいない。

 

11月7日(木曜) 夜

 鼻の下に大きな吹き出物ができた。

 さいわい皮膚科でもらった軟膏が残っていたのでベタベタ塗っていたのだが、しばらく過ごすうち、日常生活への被害が甚大なことを思い知らされた。なにかのにおいを嗅ぐたびに軟膏がべっとり付着してしまうんである。

 職場で使っているボールペンを嗅いではベチョリ、着ているセーターのにおいを嗅いではベチョリ。家に帰ってからも、干していた洗濯物を取り入れるときに嗅いではベチョリ。身の回りのものがどんどんどんどん油漬けになっていくのだ。うわー、神さま助けて!!

 気がつけばいつも使ってるランチョンマットにまで軟膏の染みが。無意識のうちにこんなものまで嗅いでいたとは…。

 自分がふだん、いかににおいを嗅ぎまくっているか再確認しました。

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 ところで、空気を遮断してタバコの火を消すと、腐った魚みたいなにおいがすることを発見。

 食べるものがなにもなくてひもじいときは、タバコの火を空気遮断してみることにしよう。

 腐っても鯛。鯛じゃないけど。

 

11月6日(火曜) 夜

 店員にメニューを注文すると「喜んで!」というかけ声が返ってくる某居酒屋チェーンがあるらしい。

 しかし店員とて人の子、バイトの連中なんかは内心「めんどくせえなァ!」と思ってやがるに違いない。忙しいときなどは露骨にイヤな顔をしながら「喜んで!」。マニュアル対応に気持ちなど期待するほうが間違いなのだが、こんなので喜ぶほど客は単純じゃあない。

 「目は口ほどに物を言う」との格言もあるとおり、上っ面の言葉よりは表情や行動などノンバーバルな表現を使ったほうが効果はずっと大きいだろう。こう考えると、上記の某居酒屋チェーンもマニュアルに少し手を加えたほうがいい。とにかく態度で表現するのだ。

 「お客さまから注文を受けたら無言で相手の目を見つめ、ニターッと含み笑いを浮かべながら小さくガッツボーズをとること」

 こういうバイトがウロウロしてる居酒屋なら是非行ってみたい。一度だけでいいから。

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 あんまり関係ないが、ぼくが学生時代にバイトしていたイタリヤ料理屋Sのマニュアルにはこんな一文があった。

 「お客さまに迷惑があった場合には無礼にならないよう、臨機応変に対応すること」

 臨機応変とか書いてる時点でマニュアルじゃないと思うのはぼくだけでしょうか。

 

11月5日(月曜) 深夜

 ぼくはモノトーンの服があまり好きじゃない。その無機質さがどうも苦手なんである。

 「無機質であること」がイヤなのではない。むしろ好きといってもいい。じゃあなぜモノトーンの服を避けるかというと、無機質なものを身にまとっていることによって、自分自身の「有機性」が余計に目立ってもっさくなるような気がするから。

 てなことを先日知人に話してみたのだが全然共感してもらえなかった。悔しいのでここにもう少し詳しく書いてみる。

 たとえば服装も化粧もばっちりキメて、脱毛処理もカンペキにして、まゆ毛も全部描いてるような「無機質志向」の女性。こういうタイプの人は「無機質」を志向しているのだろうし、決して悪いことじゃあないと思う。清潔感がアップしていいことだ。

 ただ、全体が無機質になると、パーツの有機性(動物っぽさ)が際立つような気がするのだ。いくら化粧したって整形したって顔面には鼻の穴が開いているわけだし、おまけにここから空気が出入りしているんである。うわーグロテスク!

 と思って目をそらせば、今度は耳たぶの肉塊が目に入る。音を拾うための妙にクニャクニャした構造物が付いていて、これではまるで生命体ではないか(いやそうなんだけど)。これを悪趣味と言わずしてなんと言おうか。

 だからこそ主張したい。あまり神経症的に無機質を追求するのはよくないんじゃないかと。

 …とか書いてますが、ほんとに神経症的なのはこんなことばかり考えてるぼくのほうなんですけどね。

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 それを言えばジーンズやパンツの前面についてるジッパーも考えものだ。

 たしかにジッパーは便利だけれど、なにしろ生殖器を取り出すために設けられているパーツなのだ。こんなものをなんの恥じらいもなく付けて歩いているなんて、考えただけで顔が赤くなるどころか真っ青である。

 こう書いてもピンとこない諸兄諸姉には「ズボンを脱がずにウンコするためのジッパー」が前から後ろまで付いているジーンズを想像してもらいたい。こんなものをはいて街中を歩けるでしょうか。普通のジッパーは見慣れてるから感覚がにぶっているが、本質は同じことだろう。

 どんなブランド物にもジッパーが付いてるし、アイドルでさえも「生殖器を取り出すパーツ」が丸見えのズボンをはいている。我々はこの事実を今いちど考え直してみるほうがいい。…かというと、こういう余計なことは考えないほうがいいと思います。

 今日の日記を読んで、鼻の穴や耳たぶやジッパーが気になってノイローゼになる人が増えることを密かに期待しつつ。

 

11月4日(日曜) 夜

 昨日は出張で東京に行ってたので更新できませんでした。ああ、せわしない連休。

 ところで新幹線に乗るたびにいつも思う。降車駅が近づくと、どうしてみんな妙に早くから降りる準備をするんだろう?

 この写真も京都駅に到着する5分くらい前に撮ったものである。にもかかわらず、降りる人はみんな席を立って行列している始末。

 「下車しそびれたら取り返しのつかないことになる!」という危機感もたしかに分かる(取り返しはつくと思うけど)。だが、東京駅のように終着駅で降りる場合でも、皆ものすごく早くから支度しているんである。うーむ不思議。

 周囲の乗客がみんなこうだとぼくもなんだか焦ってきて、けっきょく到着の何分も前に身支度をすませてしまう。その結果、駅に着くまでの時間を持て余し、一人でイライラしているというのがパターンである(準備するまでの時間もただボーッと座っているだけなんだけど、気持ちが降りるモードに切り替わるから急に待ちきれなくなる)。

 …と常々疑問に思っていたので、今日はギリギリまでねばってみたら、ほんとに降り遅れそうになってかっこ悪うございました。新幹線で降り遅れそうになってダッシュしてる人ってあまりいない。

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 東京で泊まった安ビジネスホテルには冷蔵庫がなかったので、朝、しかたなくお湯を飲んだ。

 お湯を飲むのなんて久しぶりなので新鮮な気分でした。世のなかにはこんな飲み物のあったんだ。

 今後、我が家に来客があったらこいつでもてなすことにしよう。

 「よかったらお湯でもいかがです?」

 

11月2日(土曜) 深夜

 風邪が治らないうえに妙に忙しくて、しかたなく発泡酒を飲んでおります。

 休日なのに料理を作る時間がなかったので、近所のデパートのデリで買い物していたらパン屋のコーナーに。

 一瞬、「諸パン」かと思いました。確かにいろんなパンがある。

 それとも「ショパン」と「諸パン」をかけているのか。だとしたら赤面モノである。

 というか、こういうことを考えてしまう自分のセンスに赤面。

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 さて本日、某企業の連載コラムが更新されてます。

 今回のテーマは「いまどきの京彫像」。京都の街などで見かけた石像や銅像を集めてみたレポートです。コラムの担当者のかたから「内容的にちょっと配慮していただきい箇所があるのですが…」とのご指摘を受けたので、マイルドな表現になっている箇所があったりしますが、その辺りはイマジネーションをひとつお願いします。

 よろしければご覧くださると嬉しいです。

 

11月1日(金曜) 深夜

 調べものがあったので母校の大学図書館に行ってました。

 そしたら大学院時代の後輩に出会ったのでおどろいた。かれこれ2年ぶり。本来なら「ひさしぶりー!」となるんだろうが、今日のぼくはそうじゃなかった。「うわー、会っちまった!」。

 ちょうどトイレで用を足してきた帰りに出会ってしまったのだ。というか、おしっこを放出し終えないままホースを収納してしまったので、股間に大きな染みがついていたんである。2年ぶりの再会がこれでは先輩としてのメンツが立たないではないか。

 …てなわけで、立ち話しているあいだ中ずっと、股間の前でキュッと腕を組んでおったわけです。動揺を悟られるとマズいので、せいいっぱい堂々とした立ち振る舞いを心がけながら「やあ、ずいぶん久しぶりだねえ!」なんてって。

 したらば後輩いわく。「名倉さんってちょっと雰囲気変わりましたよね」。

 どうやらぼくの立ち振る舞いに違和感を抱いたらしい。こちらには切羽詰った事情があったにせよ、いま思えば気持ちは分かる。なにしろ2年ぶりに偶然会ったら、「股間の前でキュッと腕を組みながらエラソーに喋る」人物になっていたんである。これは妙だ。

 後輩は「人は2年でここまで変化すること」を学んでくれたことだろう。人生の先輩として素直に嬉しい。たまにはぼくだってエラソーになる。

 ほんとは尿がズボンに染みこむ数秒で人格変化してるんだけどな。

 


   2002年10月のプチ日記 

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